『The Four Treasures』Harapan Ong(訳:星野泰佑)

『Principia』のハラパン・オンによる、ギャフ・カードを取り入れたカード・マジック集。コンセプトは、“広告カードのような使われていないカードの代わりにギャフ・カードを入れておいて、キラー・エフェクトをお見舞いしようぜ”というもの。4枚のギャフ・カードが付属されており、それぞれを1枚ずつ使うトリックが4つ掲載されている。

『Principia』にもThrowaway Tricksというコンセプトがあったが、あちらはギャフ・カードをメインにパケットを構成するのに対して、こちらはデックやノーマル・カードと組み合わせてトリックを作っている。

100ページある本だが、写真が大きく、1ページあたりの密度は小さい。タイトルの由来は中国において4種の書道用具を指す“文房四宝”であり、デザインも中国っぽいものになっている。

 トリックについて。

“Centre of Attention” ツイスティング現象からのオフバランス・トランスポジション。起承転結がはっきりしており、ギャフ・カードの特性を最大限に活かした構成が美しい。

“Punchback” キックバックのバリエーション。2段構成となり、観客の思考の誘導がより明確になった印象。『Principia』でも使われていた手法によって、ビジュアルな要素はそのままに、説得力の向上・負担の低減が達成されている。

 

“ギャフ・カードを持ち歩いておこう”というコンセプトは興味深く、敬遠気味だったギャフ・カードの利用について見直すきっかけとなる一冊だった。ただ、やはり取り回しに制限が出るため、トリックの前後で適切にギャフ・カードを追加・除去する策略についても勉強する必要はある。

『The Four Treasures』(Harapan Ong, TCC, 2020)(日本語版『王房四宝』:星野泰佑[訳]、移山舎、2021)