『The Touch』Robbie Moreland (Robert Moreland)

アメリカのマジシャン、ロビー・モアランド(ロバート表記の方が多い)のDVD。収録作品数は3つと少ないが、30年以上のベテランマジシャンだけあって、いずれも実践的、効果的でビジュアルなトリックである。また、タイミングや動きには練習が必要なものの、技法の難易度自体はそれほど高くない。いずれも習得する価値があるトリックであるし、また習得できれば演者自体の技術力・演技力の向上にもつながりそうだ。

また、解説が丁寧なのも良い。まず一通りの流れの説明があった後に(これだけでも十分理解できる)、個々の技法についてさらに細かく説明が行われるという形式。別法などの解説もあるので一通り見ておきたい。

トリックについて。

“Vibes”

観客が自由に選んだカードを当てるものだが、そこに観客が事前に決めていた数にまでデックの枚数が減少してしまうという現象が加わる。52枚のカードが二十数枚になるということは、つまり30枚ほどがどこかへ行ってしまうわけだが、ここで使われる技法のための理由付けもしっかりしている。台詞が重要になってくるので頑張って英語を聞き取るべきところ。解説後半に別法もあるので要チェック。

“Bullet Proof”

コイン・スルー・ザ・テーブルからのグラス・スルー・ザ・テーブル。手法はグラスにペーパーナプキンを被せて……という例のクラシックなものだが、注目したいのはグラスの貫通の示し方。大抵のマジシャンが思い切り叩き潰すところを、指一本でナプキンを静かに押しているのだ。非常に印象深い瞬間を演出できるやり方で、個人的にはこの見せ方一つを知れただけでこのDVDの価値があったと感じている(PVで見られる部分なので、じゃあPVで十分ということでは、というツッコミが聞こえてきそうだが)。途中に軽くスルー・ザ・テーブル以外の貫通現象もやっているが、ここは無くてもいいような気がした。

“The Burst”

上記2トリックと比べ、こちらは瞬間的なビジュアルさが目立つトリック。4のカードが分裂していき最終的には4枚のAになり、それらが消失したり再び現れたりする手順。ビジュアルな現象が立て続けに起きるが、技法的な難易度はあまり高くなく、スムーズにできるかどうかの方がカギになる。このトリックも、最初の分裂現象に対してそれに合った台詞が添えられているため、しっかり聞き取りたい部分である。

 

技法の丁寧な解説や演技中の台詞が英語のために、しっかりと理解できないのが難点か。また、どれも質が高いといえ(だからこそ)、本DVDの3トリックというのはやはり物足りないので、Penguin LiveやAt The Table Live Lectureもいずれ見てみたい。書籍が出てくれるとありがたいのだが。

ちなみに定価30ドルのところ、何故かMAJIONでのみほぼ半額で販売されているので、購入するならMAJIONがおすすめである。

『The Touch』(Robbie Moreland, 2016)