『Wabi-Sabi』Harapan Ong(訳:星野泰佑)

2017年に出たハラパン・オンのレクチャー・ノート。“わびさび”ということで、「自分のトリックの出来には満足しているものの、永遠に完璧なものとはならない。とはいえ、こうした不完全なものにも美を見出すことはできる」といった前書きが添えられている。

7つのカード・トリックと、マジシャン仲間でできるゲームの提案が1つ。ほぼパケット・トリックで、小品集といえる一冊。

 トリックについて。

“All Hail the Great Leader” ロイ・ウォルトンのトリックをフォロー・ザ・リーダーとして演出し、さらにもう2段付け加えたもの。よくあるような、パケットを交換して一番上のカードを見せて、またパケットを交換して…という流れではないが、後半も含めて演出とよく合っている。

“MixUnMix” 3×3のオイル&ウォーター。黒3枚がビジュアルに黒赤黒になり、再び黒3枚に戻る。使われている技法が面白い。

“Stock Lines” トリックではなく、マジシャン仲間でできるゲームの提案。勝ち負けを争うというより、みんなで1人のプレイヤーを応援してクリアを目指す感じで、初心者にはかなり厳しいが、腕に自信のある人がプレイヤーになるとなかなか盛り上がりそう。オフ会などでやってみたい。

 

ギャフ・カードをかなりダイレクトに使うトリックなどもあり、全体的にはまだまだ洗練の余地が大きいと感じた。『Principia』に載っているようなトリックを期待すると肩透かしを食らうかもしれない。マジックマーケットで頒布されるレクチャー・ノートを楽しめる層向けか。

『Wabi-Sabi』(Harapan Ong, self-publishing, 2017)(日本語版:星野泰佑[訳]、移山舎、2021)